王との会見を前に、予行演習をしていた王子とフォルスタッフですが、王役の王子にさんざん悪口を言われ、立つ瀬のなくなったフォルスタッフは王子役として自己弁明を始めたところ、突然バードルフが知らせをもって入ってきます。自己弁明を邪魔されたフォルスタッフは、こう叫んで劇中劇をつづけようとしますが、結局さえぎられてしまいます。単純な英語ですが、意味に奥行きがあり、『ハムレット』の 'Play's the thing' 同様捨てがたい味があります。
芝居はしまいまでやらせてくれ、と叫んだフォルスタッフですが、皮肉にも第2部では、現実の劇場で王という役を演じきるハル王子(いや、そのときはもうヘンリー五世)に引導を渡され、そのショックで死の床についてしまうことになります。フォルスタッフは、そのときすでに別な劇が始まっていることを理解できませんでした。
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