シェイクスピアの名台詞〜Memorable Speeches from Shakespeare〜

これは数多くのイギリス国王から黄金の冠を奪い去った眠りだ。
 this is a sleep
That from this golden rigol hath divorc'd
So many English kings.
作品解説
『ヘンリー四世第二部』4幕3場


王の臨終の床に付き添っていたハル王子は眠りに入った王が死んでしまったものと思い、傍らに置いてある王冠を自分の頭に載せて立ち去る。その王冠はリチャード二世から無理やり奪い去ったものだ。それだけに王は奪われる恐怖にたえずおびえつづけていた。目覚めると、王子を呼び、王冠を持ち去ったことをとがめるが、すぐに誤解は解け、父王は王冠を息子にゆずり、息を引き取る。

PRINCE. This sleep is sound indeed; this is a sleep
That from this golden rigol hath divorc'd
So many English kings.
(底なしの眠りよ。これは数多くのイギリス国王から黄金の冠を奪い去った眠りだ。)

王と眠りはシェイクスピアが何度も使うモチーフだ。3幕で王は「今ごろ平民はぐっすり眠っていることだろうに」と不眠に苦しむわが身をかこっているし、『ヘンリー六世第三部』でも気苦労のない羊飼いの眠りをうらやんでいる。『マクベス』では血染めの刀で王位を奪ったマクベスは、眠りまで殺してしまったと恐れおののき、マクベス夫人は夢遊病にさいなまれる。


Copyright (C) 2003 戸所宏之 引用の際はURLの表示をお願いします

inserted by FC2 system