父の亡霊の話を聞くうち、ハムレットは自分が予感した「よからぬこと」が単なる思いつきでないことを知り、自分自身には「預言者」(prophet)の能力が備わっているのだ、とやや大袈裟に言う。(私の稚拙な訳では、全くその感じは出ていない。)
この台詞が伝える意味を説明するのは難しいが、あえて言えば、半分はおどけ、半分は悲愴、そして、おどけているがゆえに、なおさら悲愴感が強まる、そんな感じがこの台詞の漂う。残念ながら、この感じは舞台上でしか味わえない。そういう意味で非常にドラマティックな台詞である。
映画ではこの感じが出せない。映画はどうしても写実に走るからハムレットが演じているその気分を伝えられない。「今、舞台にいる」その実感が必要である。謂わば、芝居がかりながら、芝居を超えた現実感を表現する、そんな運動がこの台詞にある。
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