先王の亡霊が地下から轟かせる恐ろしい叫び声に、ホレイショーが
おお、南無三、何という不可思議!
O day and night, but this is wondrous strange!
と驚くが、それに対してハムレットが言ったことば。
シェイクスピアの時代は歴史ではルネサンス(文芸復興)と区分されている。哲学が重要な地位を占めた時代である。その哲学をもってしても地上の出来事の不思議さは完全に解明できるわけではない、というハムレットのことばには、舞台という不思議(奇跡)が行なわれる場で生きたシェイクスピアが、哲学(あるいは理性)には限界がある、と言っているような響きが感じられる。
ついでにもうひとつ哲学の話題を・・・
哲学なんてくそくらえ!ジュリエットひとり作れないくせに!
Hang up philosophy!
Unless philosophy can make a Juliet.
『ロミオとジュリエット』 三幕三場58-9行
これは絶望に駆られたロミオが何とかなだめようとするロレンス修道士に毒づいたことばだが、ここでも哲学は分が悪いようだ。
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