シェイクスピアの名台詞〜Memorable Speeches from Shakespeare〜

思いのこもらぬ祈りは天には届かぬ
Words without thoughts never to heaven go.
作品解説はここへ
『ハムレット』3幕3場


KING. My words fly up, my thoughts remain below.
Words without thoughts never to heaven go.
(ことばは宙に舞い、思いは地に残る。思いのこもらぬ祈りは天には届かぬ。)

兄殺しの罪に、今さらながらにおののくクローディアスだが、神への祈りが通じないことを知りながらも、祈らずにはいられない。王の吐き出すような懊悩を韻律の乱調が伝えてくれる。この二行の押韻対句をリズム分析すると次のようになる。(cf.弱強五歩格

Mywordsflyup,mythoughtre-mainsbe-low.

一行目はこのように極めてリズミカルな響きで読まれるのだが、二行目を見ると

Wordswith-outthoughtsne-vertoheav-engo.

と、急激に乱れを見せる。こういうところにもシェイクスピアの配慮がうかがえる。

なお、この台詞は場面の最後になるので脚韻を踏んでいる。こういう風に韻を踏んで場面を閉じることから、こういう脚韻をending couplet(あるいはclosing couplet)と呼ぶ。


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