リア王は苦しみの最中で非情なまでに明晰な洞察に達する。このことばはその一つ。この世を舞台と見なし、また、舞台をこの世と見なすのはルネサンス時代の特徴的な思想で、theatrum mundi(世界の劇場)という名前を与えられている。また、シェイクスピアが数多くの名作を上演したグローブ座の正面玄関にはTotus mundus agit histrionem.(全世界の人々は役者として生きている。)というモットーが掲げられていたという。
this great stageとリアが言う時、「この舞台」とは、当時の観客の目の前にあるグローブ座の舞台であると同時に、地球という巨大な劇場でもあった。そういう両義性が、不気味なほど強烈に作用する台詞だ。
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