この歌い出しに続けて
いいや、君の方が美しく、穏やかだ。
Thou art more lovely and more temperate:
と晴れやかなイギリスの夏より素晴らしい「君」を讃えます。
このソネットは英語の詩の中でもおそらく一番有名な詩と言えるでしょう。ロビン・ウィリアムズ主演の映画『今を生きる』(Dead Poets Society) でも使われています。この映画を見た人は多いと思います。さあどこで使われていたでしょう?・・・・
答は洞窟の中です。「死せる詩人の会」の集会場所である洞窟に女子学生を招待し「君のために僕が作った」と言ってこの詩を読んで聞かせる場面があります。思い出しましたか?
もう一つ、このソネットが映画で使われた印象的な場面を挙げれば、『恋に落ちたシェイクスピア』でヴァイオラがシェイクスピアから送られた詩を朗読する場面がありますが、その詩がこのソネットです。実はこの場面にはひとつの洒落が仕掛けられています。というのも、このソネットは(というより『ソネット集』全体が)ある美しい貴公子に捧げられたもので、ここで「君」と呼びかけられているのは女性ではなく、男性なのです。誰でもこの事実にショックを受けます。普通に読めばシェイクスピアが女性に宛てて書いたものと、つい読んでしまいます。シェイクスピア=ホモ説もこんなところから出てきたのかも知れません。
映画ではそれを、男装したヴァイオラを経由してヴァイオラ自身に届けられるというかたちで上手にからませています。性の遊びです。と言ってもsexではなくgenderの性ですが。
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