シェイクスピアの名台詞〜Memorable Speeches from Shakespeare〜

君の罪は若さだと言うひともあれば、悪ふざけだと言うひともいる。
君の魅力は若さだと言うひともあれば、品のよい遊び心だと言うひともいる。
Some say thy fault is youth, some wantonness,
Some say thy grace is youth and gentle sport,
作品解説
『ソネット集』96番


ここにも美青年を知る手がかりがある。どうやらここで語られている罪は実際に美青年が犯したもののように見える。しかも、そのどれもが大目に見られている。美青年は調子づいて何をしでかすか分らない。ここにも美青年の無軌道ぶりがうかがえる。シェイクスピアはこの若者に不信感を抱いているのだが、強い態度に出られないでいる。詩人はただお願いすることしかできない。

これを読むと『ヴェニスの商人』のアントニオのことが頭に浮かぶ。金づかいのあらい若者バッサニオのためにアントニオは文字通りからだを張って借金をする。そのためにあやうくいのちを失いそうになるが、それではバッサニオを恨んだりはしない。むしろ、「君のために死ねるなら本望だ」とまで言い切る。この二人に肉体関係を想像することはむずかしいように思える。シェイクスピアと美青年の関係もこんなふうだったのではないだろうか。

全文は次の通り……

Some say thy fault is youth, some wantonness,
Some say thy grace is youth and gentle sport,
Both grace and faults are loved of more and less:
Thou mak'st faults graces, that to thee resort:
As on the finger of a throned queen,
The basest jewel will be well esteemed:
So are those errors that in thee are seen,
To truths translated, and for true things deemed.
How many lambs might the stern wolf betray,
If like a lamb he could his looks translate!
How many gazers mightst thou lead away,
if thou wouldst use the strength of all thy state!
But do not so, I love thee in such sort,
As thou being mine, mine is thy good report.

君の罪は若さだと言うひともあれば、悪ふざけだと言うひともいる。
君の魅力は若さだと言うひともあれば、品のよい遊び心だと言うひともいる。
いいところも悪いところもひっくるめ君は誰にでも好かれる。
どんな罪も君がかかわれば魅力になってしまう。
ちょうど女王の指に嵌められると
どんな粗悪な宝石も最上のものに見なされるように、
様々なあやまちも君が犯したとなると
美徳にすり替わり、心のこもったものとして受けとられる。
残忍な狼が子羊に化けられるなら
羊をだますことなど朝飯前だ。
君が身にそなわった力のすべてを使えば
崇拝者を惑わすことなど手もないことだ。
 でも、お願いだからそんなことはしないでくれ。
 君は私のもの、私は君の名声だけを聞いていたい。


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