ヴェニスの商人

シェイクスピア台詞集〜1


今回からシェイクスピアの作品の中からいろいろな場面を抜粋して紹介していきたいと思います。「今月のキーワード」の欄でもシェイクスピアの詩や台詞を紹介していますが、この欄では作品の場面がある程度想い描けるような抜粋を心掛けたいと思っています。


Portia:
Tell me where is fancy bred,
Or in the heart or in the head?
How begot, how nourished?
(All)       Reply, reply.
It is engend'red in the eyes,
With gazing fed, and fancy dies
In the cradle where it lies.
Let us all ring fancy's knell.
I'll begin it. Ding, dong, bell.
(All)       Ding, dong, bell.
ポーシャ:(歌う)浮気心はどこに宿るの、心それとも、頭の中?どうして生まれて、どうして育つの?
(皆で:答えて、答えて)。
浮気心は眼に宿る、じっと見つめて大きく育ち、生まれたゆりかごの中で死ぬ。皆さんいっしょに鳴らしましょ、浮気心を弔う鐘を。最初は私、ディン・ドン・ベル。
(皆で:ディン・ドン・ベル)(『ヴェニスの商人』3幕2場より)

美しいポーシャを手に入れようと世界中から求婚者がひきも切らないのですが、結婚するためには、ポーシャの絵姿が入った小箱を、金、銀、鉛の小箱のどれかから選ばなければなりません。いよいよポーシャに一目惚れしてしまったバッサーニオの番になりました。ポーシャ自身もバッサーニオに惹かれています。

そこで考え出した窮余の策がこの歌。bred, head, nourished(当時edはエッドとも発音されました)に注目。みな、鉛(lead)と韻を踏んでいます。父親の遺言で答を教えてはいけないことになっていますが、これなら教えたことにはなりません。その上、ついでに浮気は駄目よ、とくぎを刺すことも忘れません。なかなか手の込んだ謎歌なのですが、肝心のバッサーニオが気付いてくれなければ水の泡。さて、どうなったでしょう。


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