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名前が何なの?(What's in a name?)



 これは、運命のいたずらで敵方の息子と恋に落ちたジュリエットが、ひとりもの思いに耽り、「ロミオ、ロミオ」と切ない願いを語るあの有名なバルコニーの場面(二幕二場)の一部です。「薔薇は何と呼ばれようと、その甘い香りに変わりはない」のだから、ロミオも別の名前で呼ばれてもその素晴らしさに変わりはない、とジュリエットは言います。しかし、本当にそうでしょうか。シェイクスピアの作品では名前が重要な役割を果たしているのです。
 例えば、『じゃじゃ馬ならし』で青年ルーセンショオは恋人を口説くために召し使いと衣裳を交換して恋人に家に乗り込むのですが、その時キャンビオと名乗りました。Cambioにはイタリア語で「交換」の意味があります。
 『十二夜』にはマルヴォリオ(Malvolio「悪意」)という意地悪な執事が登場します。
 『尺には尺を』で、妹に兄の命を助ける代りその操を差し出せと無理無体な要求をする悪魔のような国王代理にはアンジェロ(Angelo、つまり「天使」)という皮肉の利いた名前が付けられています。
 そういえば、ジュリエットは最初の出会いでロミオに「巡礼さん」と呼び掛けるのですが、Romeoには「巡礼」の意があるのです。となると、彼の名前はどうしてもロミオでなければならないようです。


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