OTHELLO:
If it were now to die,
'Twere now to be most happy. for I fear
My soul hath her content so absolute
That not another comfort like to this
Succeeds in unknown fate.
オセロー:
今ここで死ねたら、この上ない仕合せだ。それというのも、これ以上の喜びは行く先知れずの運命ではもう二度とやって来ないような気がするからだ。(『オセロー』二幕一場)
これは、嵐の海から命からがらキプロス島に辿り着いたオセローが、愛する妻デスデモーナと再会した喜びのあまり発した言葉です。別に夫婦の行く末を悲観しているのではありません。しかし、「もう二度とやって来ないような気がする」と言った言葉通り、この後二人には不幸な出来事ばかり起ります。こういう趣向を劇的皮肉(dramatic irony)と言います。本人がそれと知らずに自分の運命を言い当ててしまっている皮肉です。当人の自分の運命に対する無知が観客の哀れみを誘います。
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